2014年06月05日

熊谷守一の猫

だいたい猫好きというのは猫のように勝手気儘を欲する人である。
しかし、現実の諸事情により勝手気儘ができないので、代りに猫を愛している部分がある。

現在の私は明らかにそうだが、リタイアして気儘な身分となったら、今のように猫に関心を持ち続けるだろうか。
私自身が猫なのだから、猫は私と同じ、要は同胞である。
別に珍しくも、憧れもない。

たぶん野良猫に餌位は出そうが、家飼して面倒な用の始末などはしないだろう。
庭に居つけばそれまで、去ればそれまでという感じだろう。

リタイアした私のような心境の画家がいた。
熊谷守一という97まで生きた人だが、彼が描く猫はあまり可愛くない。

結局、人が人を描くようなものだから、可愛いばかりではあるまい。
猫の厄介な心根も分かったのだろう。

とはいえ画家だから、それなりに味のある絵を描く。
ちなみに私が最も好きなのはこの絵である。

まるで酔い潰れた親父のようだ。

images.jpg


posted by なすび at 07:42| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月01日

先人の英知

母は私が小さい頃、男を作って家を出てしまった。
だから、私はお婆さんに育てられた。
お婆さんは出ない乳首を咥えさせながら、小さな私にいろいろな話をしてくれた。
今日はそのうちの一つをお話しよう。

 **

お婆さんが若かった頃、金持ちの家で働いていた。
その老いた主人は既にリタイアし、広い庭でバラを育て、悠々自適の暮しをしていた。

お婆さんはあるとき老主人に訊ねた。
どうしたら貴方のようにお金持ちになれますかと。

老主人は温和なお婆さんが気に入っていたようだ。
お婆さんを抱き上げると、頭を撫でながら語ってくれた。

それはね、お前が欲しいお金の額と欲しい時期を紙に書くことだ。
そして、何度もそれを見返すことだよ。
そうすれば、お前はその時にその額を手に入れているだろうと。

お婆さんは驚いた。
そんな簡単な方法で金持ちになれるとはとても思えなかった。
しかし、いざやってみると意外に難しい。
心にもないことを紙に書き残すのは抵抗があったからだ。

老主人はある晴れた初夏の午後バラ園で斃れた。
それは彼が望んだ死に方だった。
お婆さんは主人の死を看取ると静かにその家を出た。

お婆さんにとってそれから苦労の連続だった。
食べ物と住処を求めてあちらこちらさ迷い歩いた。
同胞に虐められ、やっと見つけた住処を追い出されることもあった。
手に入れた食べ物を奪われることもあった。

とうとうお婆さんは倒れ込んだ。
もう死ぬかと思われた。
そこで昔の主人の言葉を思い出し、祈りを込めて紙に書いた。

一生食べ物と住処に困らぬこと・・・そして時期は今直ぐ。

そうすると、あら不思議、家から人が出てきてお婆さんを見つけると、犬用のカリカリをくれたのである。
お婆さんはその家の前庭に倒れ込んでいたのだ。

お婆さんはカリカリを腹一杯食べると、そのまま眠り込んでしまった。
翌日は猫用のカリカリを買って来てくれた。
また、腹一杯食べると、そのまま眠り込んでしまった。
お婆さんはそのままその家に居つき、私の母まで産んでしまったのだ。

 **

随分と長話をしてしまった。
私はすっかりお腹が空いてしまった。

しかし、老主人の言葉は正しかった。
お婆さんだけでなく、孫の私まで恩恵を受けているのだから。
誠に有難いのは先人の英知である。

さて、台所に行って猫缶でも食べるか。

CIMG3025.JPG
By 黒猫のクロちゃん


【注】このエントリは「成功の掟-若きミリオネア物語」から着想しています。


posted by なすび at 10:16| Comment(6) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月18日

私は忙しい

まわりの人は私のことを暇だと誤解しているようだ。
本当にとんでもない話だ。

私が一日中居間にいるのも、実はこの家の悪霊を鎮めるためである。
私はお婆さんからその術を授けられた。

この家の悪霊は頑強だ。
だから息子は結婚しなかったし、近々アリリタまでするという。
本当にとんでもない話だ。
私の祈りがなければもっと酷いことになっていたはずだ。

私は眠っているように見えるが、これは霊を鎮める秘術である。
眠っている振りをしているだけで、本当は・・・起きている。
この技は結構疲れるので、猫缶が一日5つ必要なことは理解して欲しい。

しかし、まわりの人には私の献身が分からないようだ。
私が立ち上がると、これ幸い、直に外で用をさせようとする。
その間に魑魅魍魎が繁茂したらどうするつもりだ。

腹立たしい限りだが、無知な人たちを責めるのはよそう。
私にはお婆さんから引き継いだ、この家を守るという大切な使命がある。

用は早々に済ませ、居間でもうひと眠り・・・いや祈祷を続けなければならない。
この家の安寧のために、そして馬鹿息子が独りでも幸せに暮せますようにと・・・。

本当に私は忙しい。

CIMG3020.JPG
By 黒猫のクロちゃん


posted by なすび at 19:13| Comment(8) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月01日

猫の悩み相談

私も歳をとった。
もう90くらいかもしれない。

私は日中、居間で寝ていることが多いが、面倒なのは外で用を足さないといけないことだ。
若い頃は冬の雨の中でも平気でさっさと済ますことができたが、この頃は億劫で我慢も効かない。
つい気を弛めるともう耐えられなくて、何度か居間の隅で漏らしてしまった。

母さんは気づくと大声で慌て騒ぐ。
私は叱責され、濡れたカーペットに顔を近づけられ、くさい臭いを嗅がされる。

そんなことが続いた後、母さんも兄さんも私が起き上がると、決まって「ちっちする?」と言うようになった。
私は缶詰を食べたかったり、水を飲みたかったりするだけなのに。
酷いときは無理に庭に下ろされ、私が用を足したかどうか確認までされる。

私だって好きでお漏らしをしている訳ではない!

若い頃、私は美人だった。黒髪が艶やかで美しいと褒められたものだ。
それが今やこの有り様。プライドを傷つけられ、怒り心頭だ。
だから腹が立ったら思いっきり好きな缶詰を食べ、母さんの懐を軽くしてやる所存だ。

こんな私は悪い娘でしょうか?

CIMG3028.JPG
By 黒猫のクロちゃん


posted by なすび at 23:29| Comment(6) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月25日

猫は魔物

人間の女は25を過ぎた辺りから自分の歳を言いたがらなくなるが、猫はいかがなものだろうか。
実家のクロも雌であるが、最近周りの人間に不思議な魔法を使いつつある。

誰も彼女の年齢がはっきりと分からないのである。

彼女は父が暇潰しに野良猫に餌をやり始め、それから居ついた猫の孫であることは間違いない。
父が死んで17年経つ。
父が生きている時に彼女がいたかどうか皆記憶が曖昧である。

母はクロが生まれたときから世話をしているのにはっきりしないと言う。
姉も隣町にいたのに猫に興味がないと言う。
私も毎回帰省していたのに・・・よく分からない。
いずれにしても15〜20歳の間であろうと予想する。

実際、彼女の姿はヨレヨレでいつ斃れても不思議はない。
クロがあまりに大人しく寝ているので、死んでいないか時に突くこともある(もちろん怒る)。

この辺りから私の空想だ。
実はこのクロは魔猫で、もう数十年も生きている。
飼っている私たちは彼女の魔法で飼っていた記憶を消されている。
猫が何十年も生きていたら変だからだ。
私の家族は結構年寄だなと思いながらクロの世話を続けている。
実際、彼女はとんでもない年数を生き続けている・・・。

ご近所さんが「○○さんのクロちゃんは何代目ですか」などと言い出したら、かなり危険である。
帰省したらクロに確認するつもりではいるが、人間の女同様まともに答えてくれるかどうかは分からない。


posted by なすび at 13:59| Comment(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする