2014年09月14日

猫電話

少女には仲のよい友人がいた。
しかし、友人は家の都合で遠くに引越すことになった。

友人は黒猫を二匹飼っていた。
彼女はそのうちの一匹を少女に託して去っていった。

少女は人見知りで、その友人しか友達はいなかった。
少女は彼女がいなくなってとても寂しかった。

だから彼女がくれた猫を可愛がった。
彼女の身代わりのような気がしたからだ。

しかし所詮猫である。
いくら少女が話しかけても猫が言葉を返すことはない。

あるとき少女にとても悲しいことがあった。
どうしても友人と話がしたかった。
しかし、昭和の時代、遠くの子供同士が電話で話すのは簡単ではない。

少女は泣きながら猫に訴えた・・・彼女と話がしたいと。
そうするとあら不思議、突然猫の口から呼出音が響いたのである。

猫の頭を軽く叩くと、猫の口から懐かしい友人の声が聞こえた。
二匹の猫同士がテレパシーで繋がって、猫電話になってくれたのである。

少女は嬉しかった。
辛いこと、楽しいことをとにかく一杯しゃべった。
友人と話すと少女の心は晴れるのであった。

それからも、ことあるごとに猫電話で友人と話をした。
猫電話のいいところは長電話しても親に叱られないことだ。

高校を卒業して二人は再会した。
胸にそれぞれ黒猫を抱いて・・・。

  **

いい話だ・・・猫の私も泣けてくる。
おばあさんによると、この黒猫の姉妹、やはり私の縁者らしい。

しかし、残念ながら私は彼女らの能力を受け継がなかったようだ。
私は引き戸を開けてくれるよう必死でテレパシーを送っているが、母さんが気づくことは当分ない。

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By 黒猫のクロちゃん


posted by なすび at 18:38| Comment(4) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月21日

微妙だ

昔、偏屈な武将が戦に破れ、部下にも捨てられ、一人城を出た。
哀れに思ったのか一匹の黒猫が武将に従った。

武将は村外れに小屋と畑を借りた。
刀を捨て、農民として一人静かに余生を生きることにした。

猫は武将の傍を離れなかった。
武将が田畑を耕すときは畦道で昼寝をした。
武将が囲炉裏で食事するときはしつこくおねだりをした。

あるとき猫は思った。
猫の寿命は短いので、このままでは武将より先に死んでしまいそうだ。
それでは武将が一人になり、淋しい思いをするだろう。

そこで閻魔様のところに行き、人間同様長生きをさせて欲しいとお願いした。
只というわけにもいくまいから城から出るときに黙って持ち出した小判を持って行った。
閻魔様は健気な猫を哀れに思ったのか、単に小判が欲しかっただけか猫の願いを聞き入れた。
(これ以降、猫の世界では「猫に小判」とは「賄賂を贈る」という意味になったそうだ。)

それから随分のち、武将は年老い、粗末な小屋で眠るように亡くなった。
猫は武将を看取ると、武将の傍に寄り沿い、これまた眠るように死んでいった。

 **

本当にいい話だ。
おばあさんによるとその猫は私たちの一族らしい。
「あなたは黒いからきっと長生きよ」といってくれた。

この祖先を見習うなら私も兄さんを看取らなければならない。
偏屈な独り者という点では兄さんも武将と同じである。

しかし、兄さんのために私が閻魔様にお願いに行くか・・・微妙だ。

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By 黒猫のクロちゃん

posted by なすび at 18:02| Comment(8) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月01日

猫の韓国病

私の実家には猫がいる。
いたって穏やかな猫であるが、もしも悪いウィルスに感染して韓国病にかかったらどうなるだろう。

 猫:(さっき食べたが、またお腹が空いてしまった。母さんはもうくれないので、兄さんからたかろう。)
   兄さん、兄さん。
 私:なに?
 猫:兄さんは10年前、私のお尻を見たでしょう。それは大変な猫権侵害よ。だから、餌を下さい。
 私:え〜っ、そんな昔のことを。あなたが勝手に見せたのでしょう。
   私は猫が尻を見せ合うとは知りませんでした。
 猫:そんなことはどうでもいいの。見たことには変わりないのだから、餌を下さい。
 私:あなたはそんなことを去年も言っていました。そのときは餌をあげたでしょ。
 猫:まだ反省が足りないの。私はお腹が空いたのだから、兄さんがくれて当然。
 私:あなたは今でも他所に行っては尻を見せ続けているでしょ。なぜ私にばかりたかるの。
 猫:(兄さんがたかり易いからよ・・・おっと、これは言ってはいけなかったわ。)
   あなたは私の兄さんだから餌をくれるのが当然。
 私:私は猫と兄弟になった覚えはありません。もうお断りです。それから犬のお墓にも参拝します。
 猫:キィ〜、尻を見た男として近所に言い触らすぞ、コラァ。それが嫌なら餌を出せ。
 母:いいかげんにしなさい。(猫をばっこん)

もちろん架空のお話で、実際はとてもいい猫だ。
尻を見せたからといって餌を強要することなどない。

何故って?
猫は腹が減ったらいつでも母のそばに行ってニャ〜と鳴けばよいのだから。
母は一応困った振りをするが、すぐ猫が好きなだけ餌を出す。
缶詰もお好みのものを探しては提供する。
だから、猫が韓国病にかかることはありえない・・・というか、かかっていても分からない。

posted by なすび at 21:34| Comment(4) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月05日

熊谷守一の猫

だいたい猫好きというのは猫のように勝手気儘を欲する人である。
しかし、現実の諸事情により勝手気儘ができないので、代りに猫を愛している部分がある。

現在の私は明らかにそうだが、リタイアして気儘な身分となったら、今のように猫に関心を持ち続けるだろうか。
私自身が猫なのだから、猫は私と同じ、要は同胞である。
別に珍しくも、憧れもない。

たぶん野良猫に餌位は出そうが、家飼して面倒な用の始末などはしないだろう。
庭に居つけばそれまで、去ればそれまでという感じだろう。

リタイアした私のような心境の画家がいた。
熊谷守一という97まで生きた人だが、彼が描く猫はあまり可愛くない。

結局、人が人を描くようなものだから、可愛いばかりではあるまい。
猫の厄介な心根も分かったのだろう。

とはいえ画家だから、それなりに味のある絵を描く。
ちなみに私が最も好きなのはこの絵である。

まるで酔い潰れた親父のようだ。

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posted by なすび at 07:42| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月01日

先人の英知

母は私が小さい頃、男を作って家を出てしまった。
だから、私はお婆さんに育てられた。
お婆さんは出ない乳首を咥えさせながら、小さな私にいろいろな話をしてくれた。
今日はそのうちの一つをお話しよう。

 **

お婆さんが若かった頃、金持ちの家で働いていた。
その老いた主人は既にリタイアし、広い庭でバラを育て、悠々自適の暮しをしていた。

お婆さんはあるとき老主人に訊ねた。
どうしたら貴方のようにお金持ちになれますかと。

老主人は温和なお婆さんが気に入っていたようだ。
お婆さんを抱き上げると、頭を撫でながら語ってくれた。

それはね、お前が欲しいお金の額と欲しい時期を紙に書くことだ。
そして、何度もそれを見返すことだよ。
そうすれば、お前はその時にその額を手に入れているだろうと。

お婆さんは驚いた。
そんな簡単な方法で金持ちになれるとはとても思えなかった。
しかし、いざやってみると意外に難しい。
心にもないことを紙に書き残すのは抵抗があったからだ。

老主人はある晴れた初夏の午後バラ園で斃れた。
それは彼が望んだ死に方だった。
お婆さんは主人の死を看取ると静かにその家を出た。

お婆さんにとってそれから苦労の連続だった。
食べ物と住処を求めてあちらこちらさ迷い歩いた。
同胞に虐められ、やっと見つけた住処を追い出されることもあった。
手に入れた食べ物を奪われることもあった。

とうとうお婆さんは倒れ込んだ。
もう死ぬかと思われた。
そこで昔の主人の言葉を思い出し、祈りを込めて紙に書いた。

一生食べ物と住処に困らぬこと・・・そして時期は今直ぐ。

そうすると、あら不思議、家から人が出てきてお婆さんを見つけると、犬用のカリカリをくれたのである。
お婆さんはその家の前庭に倒れ込んでいたのだ。

お婆さんはカリカリを腹一杯食べると、そのまま眠り込んでしまった。
翌日は猫用のカリカリを買って来てくれた。
また、腹一杯食べると、そのまま眠り込んでしまった。
お婆さんはそのままその家に居つき、私の母まで産んでしまったのだ。

 **

随分と長話をしてしまった。
私はすっかりお腹が空いてしまった。

しかし、老主人の言葉は正しかった。
お婆さんだけでなく、孫の私まで恩恵を受けているのだから。
誠に有難いのは先人の英知である。

さて、台所に行って猫缶でも食べるか。

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By 黒猫のクロちゃん


【注】このエントリは「成功の掟-若きミリオネア物語」から着想しています。


posted by なすび at 10:16| Comment(6) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする